<最高意志>が機能しない平壌政権中枢部の混乱で難航する後継者擁立
2008年11月14日
<最高意志>が機能しない平壌政権中枢部の混乱で難航する後継者擁立
......<健在写真>乱発の背後事情
1.金王朝日没の残照...淡々とした諦観に生きるロイヤルプリンス金正男の孤独
『週間現代』11月22日号が「金正男の告白」と題して金正男が10月中旬に訪中して中国医師団の派遣に対する謝意を述べると共に「内密にして欲しい」と言いながら現在の〈後継者問題に揺れる平壌〉についても応対した中国外交部幹部たちに打ち明けている。その発言要旨を含めた同記事によると (1)8月中旬に確かに父は倒れており、その後も不安定な状態が続いている (2)父の後継者はいない (3)ポスト金正日は側近たちの集団指導体制になる (4)中国のようにわが国も改革・開放の道を辿って欲しいと願っている (5)今に至っても将軍様から後継者への言及はない(6)10月末に至って金正日は再び倒れている。その時に〈禁足令〉が出た。
ここで面白いのは、金正男が自分の発言は内密にしてもらいたいと依頼した上で慎重に言葉を選びながら発言しているにもかかわらず、中国はすぐにリークしてしまっていることだ。
北京では金正男を北京に入れば国賓として特別待遇を与えて取り込んでいるから、その気やすさから話していることをすぐに外部にリークしてしまう北京側の思惑はこれによる平壌政権内部の混乱であろう。いずれにしても一部では後継者の本命といわれる金正男の現下の異常事態の最中にある状況の本人の胸中が語られた中で今後の平壌政権の行く末をみていく上で貴重なデータとなった。既号で〈'03秋 金正日死亡説〉を報じていた同誌と思えぬほどのヒット記事であった。
2.出てくるのは昔の写真と合成ばかり......もうあきまへん金総書記
先月来、平壌から将軍様の元気なお姿の写真が何枚も公表されたが、いずれも背景には青々とした緑が繁っていていかにも季節は春から夏へかけてのものばかりなのは一目で判別できる。そんな倒れる以前の写真で今の健在ぶりを主張する根拠としようというのだから苦肉の策とはいえ、担当者たちも間抜けな話だ。
各国メディアからそれらを指摘されるや11月初めに相次いで出してきたのは人民軍サッカーチームの試合を観戦するやけににこやかな将軍様の写真だ。だがその中で将軍様の左腕には何らかの障害が残っているのが読み取れた。そんなことを払拭するためか次に出てきたのは軍部隊を訪問し兵士たちと共に撮影したものだ。また左腕の後遺症を指摘されたためだろう、次には拍手をしている動画を発表----海外の反応を見ながらそれを早速打ち消すために間髪入れずに反証を出してくるところに平壌当局の焦りと逼迫したただならぬ異常事態を感じ取ることが出来る。
さて、そこで例によって易理による将軍様の容態の現状を問うてみることにした。そこでの得卦は〈 澤山咸 上爻 〉というものだった。

ここで示している「咸」というのは「感ずる」、つまり人体の五官の働きを示すもので、上爻、つまりテッペンであるから頭頂を示しており、その働きが欠けている。だから五官の作用が正常ではなく、意識混濁やひどい場合には意識不明をも意味する。またこの〈澤山咸 上爻〉には「その輔頬舌(ほきゅうぜつ)に感ず」とあり、口舌、つまり口の働きを説いているが、これが欠落しているのだから〈言語作用に障害あり〉ということで、会話もままならない言語障害の状況にあることをも示している。
また澤山咸は以前に出た澤風大過の卦同様に棺廓、つまりカンオケの象でもあり〈三途の川の渡し場〉への将軍様の行進は歩みを停める兆しは全くないどころかその歩みを速めるばかりだ。
しかも変じて〈天山遯〉となるが、この卦は陽が減少していき陰が変じていく象を示している。これは容態を示す卦としては生命力が時を迫って減少していく衰弱を示すから、これまた不吉な卦にほかならない。平壌政権がやたら執拗に将軍様の健在ぶりを意地になって古い写真や合成写真まで持ちだして誇示しなくてはならないのもその容態は予断を許さないほどの危機に陥っているからにほかならない。
11月初めに公表してきた写真は、いずれも'06年か'05年頃に撮影されたものばかりだ。'07年10月に訪朝した韓国のノムヒョン大統領との会見における写真は前号でも紹介したように憔悴しきった表情でホオはこけ肩の肉も落ち、腹ばかりが肥えていかにも辛そうな風貌であり、このところ相次いで発表された写真類はいずれもまだ元気だった頃のものばかりである。永年の"将軍様ファン"の眼にはすぐ判ってしまうのである。
後継者を決定した後に将軍様の〈Xデー〉を迎えることにしたいのだろうが、その後継者選びの前提条件が整備されておらず難航しているための時間稼ぎで、将軍様の健康不安を今認めるわけにはいかないのだ。健在をどこまでも主張しなければならない理由はそこにある。
3.個人的命運から検証する後継者本命〈金正男研究〉
本誌は一般の〈北朝鮮ウオッチャー〉とは全く違った〈異次元よりの分析〉が売り物であるので、次にロイヤル・プリンス金正男の命運分析といこう。
この分析については拙著『金正日・破滅の日』の内容をここに紹介することにする。

「性格は内剛外柔型であり、どこか脆弱さが隠されているような柔和で控え目な態度と姿勢の人柄。義理、人情には厚い律儀な性格。社会を見る眼もファミリー内部の秩序についても封建的な色彩が濃厚である。それだけに組織内部では几帳面で気難しい性質を持っているだけに、父・金正日から受け継ぐものを持つとすれば改革はあり得ずそのままの形を踏襲していくだけの性向となろう
もし周囲の環境が紛争的な状況となっても決して攻勢側に立つことはなく、まず自己の立脚する安全圏を確保し、地歩を固めた中で手堅く生きる足場を守ろうとする。
また一面では抒情的でどちらかといえば女性的なソフトな感受性を持ち、狭くて深い人情的な交際の中に独自の人生の意義を感じていく、といったタイプである。」
成田に降り立った風体はまるで山谷や釜ヶ崎の"手配師"のような雰囲気であったが、実際は実務能力のある男で数カ国語に通じ頭脳は良い。カラオケが好きで日本のシンガーでは長渕剛が大好きで興が乗ると長渕の曲を30曲もメドレーで歌い続けるという。
若い頃は平壌の高級ホテルのクラブ内で気に入らないことがあると拳銃をぶっ放したという粗暴な振る舞いもあったというが、その本性は剛よりも柔、硬よりも軟を選ぶことを本領としているだけに、とても乱世に覇を唱えていくような人物でないのは確かだ。攻めよりも守りの人物だ。
人をそらさない気遣いと雰囲気が何よりも処世の武器といった風であるから、どうしてもそのイメージはトップに立つよりもスタッフの人格だろう。権力の座を自ら奪取していくというタイプではない。平和的状況の中での禅譲しか期待していない。
「人を見抜くカンの働きもあるが、情緒的な期待過剰や他への依頼心が強く、万事に楽観的になりやすいのが弱点となる。
他の人間的特徴としては性欲がきわめて旺盛であり、無類の女好きというところは親父譲りといえそうだ。」
金日正との相性 では正男が父・金正日の地位権力をスンナリと継承できるものだろうか。その判断材料の1つとして、この親子の相性がどうなっているかも参考となる。つまり円満な後継者としての引き継ぎが可能なら両者の運気は互いに助け合い支え合っているからだ。
そこで、この父子の関係を星の示すところから判断すると〈少しも補い助け合う要素がない〉のである。
こうしてみるとやはりもっとハッキリ言えば父親の力とはなり難いのである。さらに致命的なのは正男は〈金ファミリー〉を"破壊"する星を持っていることだ。金王朝最後の帝王となる宿命を持っている。
近未来における金正男の個人的運命というものは'07年から非常に厳しい状況に暗転する波乱状況の中に身を置くハメになる。一時的にはトップに就くがこれはおそらく金王朝の崩壊と関連してくるものと考えてよいだろう。
4.金正男、今後の運命傾向
「非常に運気荒く起伏波乱の人生を送るという兆が見えている。それは ㈰自己主張の強さのためにせっかくまとまりかけていたものを自ら破壊してしまうことが多く、また周囲や他人から妨害される場面が多い。㈪そのために九分どおり首尾よくいきそうに見えるが最後の一分で破綻してしまう。中途破綻型の運命パターンだ。」
「また別な視点からみると〈生まれながらの宿命的な運命としての特徴をいえば"相続縁"が弱い〉という点も注目すべきだろう。
また家庭運にも弱いものがある。つまり父祖から受ける恩恵を否定する星が出ているためにせっかく父祖が築き上げたものはあってもそれを掌握継承できないという宿命傾向が見えるのだ。」
また姓名からみても総画数20画は「孤独溥運数、中途挫折の暗示する数」である。凶名である。
しかし'09年から運気向上となっているので、一躍世表に浮上することになる。おそらく次期政権の要職に就くのは確実であるが、これは短期間に終わり結局は〈祖業は継げず〉の宿命の示すとおりになるのだ。
この点については彼の後見人である張成澤の命運とも深く関わってくるので次号で次期政権人事構造について論ずる時にその中でふれることにしたい。

